一言、二言

過去の一言、二言
 2017年5月27日  受賞作を2つ
 今週の購入本
 「神の手廻しオルガン」 須田狗一(光文社)
 「三つの悪夢と階段室の女王」 増田忠則(双葉社)

「神の手廻しオルガン」は第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。「三つの悪夢と階段室の女王」は短編集であり、収録されている「マグノリア通り、曇り」という作品が第35回小説推理新人賞を受賞している。

 小説推理新人賞って35回にもなるのか・・・・・・って、そんな賞あったっけ? あわてて調べてみると、第1回はなんと大沢在昌氏が受賞し、知っている作家では、香納諒一氏、本多孝好氏、大倉崇裕氏など。最近の受賞者については、ほとんど知らない作家ばかり。

 あれ、昨年の受賞で第38回になっている・・・・・・今回購入した増田氏は2013年に短編で受賞して、他の作品も付け加えて、ようやく単行本化ということらしい。調べてみて、ようやく背景がわかった。

 2017年5月20日  上下巻が多い
 今週の購入本
 「ストラディヴァリウスを上手に盗む方法」 深水黎一郎(河出書房新社)
 「ブラックボックス 上下」 マイクル・コナリー(講談社文庫)
 「宿命の地 上下 1919年三部作B」 ロバート・ゴダード(講談社文庫)
 「図書館の魔女 烏の伝言 上下」 高田大介(講談社文庫)
 「探偵が早すぎる 上」 井上真偽(講談社タイガ)
 「東京自叙伝」 奥泉光(集英社文庫)

 マイクル・コナリーの新刊、ゴダードの3部作の最終巻、図書館の魔女の次の作品、それぞれ上下巻。これだけでも合わせて6冊でなかなかの量。コナリーの作品は薄めなので読みやすそうで助かる・・・・・・って、だったら1冊にしてもよいような・・・・・・。

 あぁ、出たのは上巻だけだけど、井上氏の作品も上下巻だ!

 2017年5月13日  買えた、買えた
 今週の購入本
 「母の記憶に」 ケン・リュウ(新・ハヤカワSF)
 「寝た犬を起こすな」 イアン・ランキン(ハヤカワミステリ)
 「モモンガの件はおまかせを」 似鳥鶏(文春文庫)
 「蟇屋敷の殺人」 甲賀三郎(河出文庫)
 「どこかでベートーヴェン」 中山七里(宝島社文庫)

 近所の本屋でハヤカワミステリの新刊、きちんと置いてくれるのか不安であったのだが、しっかりと「寝た犬を起こすな」が置いてあった! もちろん即購入。それとならんでケン・リュウの「母の記憶に」もあったので、こちらも即購入。揃って、置いてあったのはうれしい。特にランキンの新作は読み逃すわけにはいかないので、買えてよかった。

 2017年5月5日  「火 花」 又吉直樹
 又吉氏の「火花」を読んだものの、ミステリではないので感想を書くかどうか迷ったのだが、とりあえずここに書いてみることにした。

 ご存じ、お笑い芸人である又吉直樹氏のデビュー小説であり、153回芥川賞受賞作。2015年に出た作品であるが、私は文庫化を待ってから読もうと思い、2017年2月に出た文春文庫を購入。

 内容は、お笑い芸人である徳永が、先輩芸人・神谷と出会い、共に過ごしてゆく中で、“笑い”というものについて考える日々を綴っている。お笑い芸人、もしくは漫才師を題材にした小説というものは、過去にもあったのではないかと思われる。ただ、本書はエンターテイメント作品ではなく、文学小説ということのようであるが、ではその違いとはなんだろうと考えながら読んでいった。

 読んでいて気づいたのは、この作品とエンターテイメントとの違いとして、決して本書が読んでいる人を楽しませようとか、なんらかの形で誘導しようとか、そういった思いで書かれたものではないということ。ひたすら、お笑い芸人として生きていくうえで、自信の苦悩や挫折を書き表したものとなっている。私個人としては、ほとんど文学小説というものに触れていなく、読んでいるものはほぼミステリとSFくらい。そうしたなかで、こういった個人の思いや考えのみを表していく小説というものを新鮮にとらえることができた。個人的な苦悩を描いた小説というと、なんとなく法月氏や浦賀氏の小説と思い起こすが、そういったものとはまた異なるものを感じとれる。

 では、本書がそういった個人的な思いのみを描いた小説というものではつまらないのかというとそんなことはなく、題材が漫才とかお笑いというものであるからなのか、意外と内容にのめり込むことができた。実際に著者自身の苦悩と重なりそうな部分がありそうだと感じたり、現実的な部分とはちょっと異なるのではなどと考えつつ読み進めていくことができた。また、お笑いとか、それに対する個人的な思いというものが真面目に文章で描かれてゆく様を堪能することができた。

 と、そうこう考えながら読みつつ、文学とはこういうものかと思ったのだが、最後の最後でなんとなくエンターテイメントっぽい色になってしまったのはどうかと感じてしまった。お笑い芸人という題材らしい終わり方ではあるのかもしれないが、そこまでの現実的な流れの中で収束してもよかったと思えたのだが。