ミステリー・プロレスリング

<その2>




王道本格(全日本)プロレスリング


鮎川 哲也(=ジャイアント馬場)
 プロレス(=本格)を堂々と打ち建て続けたこの男の功績は偉大である。

 他から何をいわれようとも、他の者達が何をしようとも、男はただ王道の道のみをひたすら走りぬけただけ。
 王道本格の巨人は今日も行く。“16文キック”(=りら荘)
 王道本格の巨人は今日も行く。“空手チョップ”(=鬼貫シリーズ)
 王道本格の巨人は今日も行く。“ランニング・ネックブリーカー”(=星影シリーズ)
 王道本格の巨人は今日も行く。“16文チョップ”(=数々の本格短編)
 王道本格の巨人は今日も行く。“32文ロケット砲”(=本格推理雑誌等編集)
 数々のレスラー達が夢見るものはただ彼の栄冠(=鮎川賞)を追い求めることのみである。





笠井 潔(=川田利明)
 巨星果つる後、王道を継ぐのはこの男しかいない。現代の王道の冠をいただくことができるのは、この男ただひとり。
 しかし、周りを見渡しても近くに誰も寄ってこないのはなぜなのか?

 男は王道をただ邁進していくのみ。“パワー・ボム”(=矢吹駆シリーズ)炸裂だ!“ストレッチ・プラム”(=天啓シリーズ)で相手を軋ませろ!
 時には若手を叱咤激励(=評論集)して次の世代へと育っていくのを暖かく見守っていく。そう、これこそが王道の道である。
 しかし、周りを見渡すと、嫌われているみたいなのはなぜなのか?





麻耶 雄嵩(=武藤敬司)
 王道だけがプロレス(=推理小説)か? 疑問を投げるその男、他のリングで培ってきた男がとうとう自ら旗をあげる。

「そう、おまえらに足りないのは“ラヴ”(=奇想)だ」
 変幻自在のその男、デビューしてすぐにスターダムにのしあがる。
 変幻自在のその技はプロレス(=本格)に目が肥えた者達さえも感嘆させる。
“ムーンサルト”(=「翼ある闇」)は宙を舞い、想像を超える到達点へと着地する。
“四の字固め”は(=「夏と冬の奏鳴曲」)は相手の骨を軋ませて、勝利へと導いていく。

 時には“ローリング・エルボー”がはずれてしまう(=「あいにくの雨で」)こともあるけれど、それもまたこの男の魅力のひとつ。
 そしてラヴの到達点は“シャイニング・ウィザード”(=「鴉」)へと昇華する。
 どこまでいけばよいのかこの男。しかし大丈夫か“W-1”(=次回作)。それでも結局この男を中心にこの世界は回っている。





歌野 晶午(=小島聡)
 遅咲きの桜、いまここに花開く
 その男は人には知られていたけれど、成績においてはぱっとせず(=「長い家」)。
 同期の強烈なキャラクターの連中たちに置いてけぼりにされる始末。
 しかし、一度開いてみれば、蓄えた力が一気に満開(=「Rommy」)。一路エースの座へと上り詰める。
 そこで勝ち取ったテンコジタッグ(=「ブードゥー・チャイルド」)にて天下をとるかと思いきや、一旦身を引き、闘う場所を移りかえる。
 新天地にてめざせ! シングルチャンピオン(=コノミス1位)。
 必殺のラリアート(=「世界の終わり、あるいは始まり」)にて頂点まではあと一歩。
 行け! 我らが平成の“喉きり隊長”





霧舎 巧(=太陽ケア)
 そう、僕も王道をめざすプロレスラー。勘違いしているなどとは言わせない。
 隠れざる、期待の新人とは僕のこと。知られざる大型新人とは僕のこと。間違いなしに王道(=本格)への道を突き進む。

 技のタイミングが微妙(=「カレイドスコープ島」)などとはいわせない。
 いまさら“スピニングトーホールド”(=「ラグナロク洞」)などとはいわせない。
 リアクションが中途半端(「=名探偵はもういない」)などとはいわせない。
 かんちがいしている(=霧舎学園)なんて聞きたくない。
 たとえ何といわれようとも僕は己の道を歩むのみ。今日も天にむかってロングホーン。決まった!





山田 正紀(=天龍源一郎)
 どけどけ、てめぇら。俺様の花道をちゃんと空けておけ。こっちとら、しょんべんくせえ、てめぇらが生まれる前からのプロレスラー(=作家)。
 後から出てきたてめぇらに指図される覚えなどない。どかねぇ奴らはグーパンチ! サッカーキックで屈辱倍増!!
 どうだい俺の“パワーボム”(=ハルピュイア)、まだまだ現役上等だ。
 どうだい俺の“ラリアート”(=長靴をはいた犬)、まだまだ負けちゃいないだろ。
 どうだい俺の“天龍チョップ”(=再版:視覚シリーズ)、まだまだ錆びついちゃいないだろ。
 50を過ぎてからだって、若い奴らにゃ負けちゃいない。取りにも取ったチャンピオンベルト(=「ミステリ・オペラ」)やっぱり俺にお似合いさ。
 闘いたい奴ぁ、名乗り出ろ。どこのリングにだって(=SFだって)あがってやるぜ。





ニューウェイブ(ノア)プロレスリング


芦辺 拓(=三沢光晴)
 確かに王道を貫いてこそプロレス(=本格)といえる。しかし、それだけでいいのだろうか?
 そう、王道を引き継ぎつつもプロレスは進化しなければならない!
 俺が出した答え! それが“ノア”(=ニューウェイブ)だ!!
 賛同する者たちを引き連れて、新時代を切り開く。俺こそが新たな時代の象徴(=編集長)だ。
 道はたがえども王道(=本格)の心を抱きつつ、他の団体(=新本格)とも交流し、そこでかかげる“GHC”。新たな時代の幕開けだ。

 元はジュニア(=ライト系)であった俺も、ヘビー級で上を目指す。この“エルボー”(=森江春策シリーズ)を武器に頂点までへと登りつめる。
 昔は技が軽いといわれたこともあった(=地味だといわれたこともあった)。
 かつては勝てないこともあった(=売れないこともあった)。
 しかし自分の実力を信じ、戦い抜いたことが糧となり、栄光への道へと登り行く。
“タイガードライバー”(=「怪人対名探偵」)炸裂だ! “エメラルド・フロウジョン”(=「グランギニョール城」)でとどめだ!!
 これからは俺が追われる立場。王座に座り迎え撃とう。さぁ、俺の首(=編集長の座)を取れるものなら取ってみろ。





二階堂 黎人(=秋山準)
 俺こそミスターニューウェイブ。王道(=本格)をこなしつつも、他のリング(=他のジャンル)でも易々こなす。
 オールラウンダー、それこそニューウェイブの本質だ。
 王道(=本格)にて頂点を極めるのは当たり前。だが、他にもやりたいことはある。それならばそちらでも頂点を目指すだけ。
 古びた枠組みに囚われるならニューウェイブの意味はない。

 デビューの時から期待の星(=「地獄の奇術師」)
 タッグ王座は数知れず(=二階堂蘭子シリーズ)
 シングルで頂点も当然のごとく(=「人狼城」)
 新天地にてもチャンピオン(=水乃サトルシリーズ)
 他団体のリングにもあがる(=新本格編集長)
 時には7秒で敗れる失態(=ギガンテス)もあったけど、そんなことで歩みを止める俺じゃない。
 今年もさらなる飛翔の年。得意の“エクスプロイダー”(=蘭子シリーズ)でGHC(=このミス1位)はいただくぜ!





愛川 晶(=小橋建太)
 これからのニューウェイブは俺たちのもの。王道(=本格)なんぞにこだわっていちゃぁ時代に取り残されるだけ。
 手広く器用にこなしながらも、一発“ガツン”と決めてみる。この姿勢がこれからのプロレスリング(=ミステリー)の姿のはず。
 王道だって決めてやる(=「黄昏の獲物」)
 幅の広い度量も見せてやる(=「鏡の奥の他人」)
 パワーだけではないファイトスタイル(=「霊名イザヤ」)
 予想もしないことだってできるのさ(=「白銀荘」)
 タッグをやらせても天下一品(=リレー小説)
 要するに俺に死角はなし。これがニューウェイブのファイトスタイル。どうだい“ぐぅ”の音もでないだろう。
 何? 最近ファイトスタイルがワンパターン(=根津愛)だと。
 ちょっと、怪我から復帰して調子がもどってないだけさ。
 見てろよ今年は“ガツン”といくぜ。決めるぜ俺の“ラリアート”





北森 鴻(=田上明)
 ニューウェイブといえども存在する。その中に“職人”たる男。地味な活躍のようでも存在感は圧倒的。
 他の奴らがチンタラしてれば、なぎ倒しながら一掃す。
 ニューウェイブを睨みつけ、ニューウェイブに活を入れる。
 そいつの歩みは着実で、常に話題の主を独占。そのうえ多岐におよぶ活動範囲。
 古い栄光などはすぐに置き捨て(=短編をシリーズ化せず)、常に新しい栄光を狙う。
 さらにはその圧倒さをエゴイズムのように見せ付けるために、かます数々の必殺技!
“ノド輪落とし”(=冬狐堂シリーズ) “ダイナミック・ボム”(=蓮丈那智シリーズ)
 生半可な奴らはこれで尻尾をまいて逃げていく。
 ニューウェイブをどうたらこうたらいう奴はとりあえずこの俺とやってみないかい?





倉知 淳(=小川良成)
 おおっと、俺こそ“ノア”(=ニューウェイブ)のくせものさ。
 真面目に戦うばかり(=書いてばかり)がいいってもんじゃぁない。
 ときにはすかし、ときにはかわす、変幻自在のいい男、それが男の生きる道。

 かつてはジュニアでならしていた(=東京創元社)俺だけども、その実力を買われてヘビーに転向(=講談社)。
 結果はもちろん成功さ。どこへいっても俺の“バックドロップ・ホールド”(=猫丸先輩)にかなう奴なんていない。
 おいおい、お前らそんなに戦ってばかりいて(=しょっちゅう本出していて)大丈夫かい?
 出し惜しみするのもエンターテイメントだぜ。ゆっくり咲いてこそ、実力派といえるはずだ。
 どうだい最近の俺の活躍(=「壺中の天国」)。なかなかしぶいと思わないかい。
 おぉっと、これですぐにトップに出るとは(=すぐに新作を出すとは)かぎらないぜ。また、ここで一歩引いてこそ味が出る。
 まぁまぁ、ゆっくりお待ちなさい。ヒーローは遅れてやってくるものさ。






ミスプロ表紙に《炎のごとく》戻る

Mystery Note に戻る

Top に戻る