2021年ベストミステリ




2021年国内ミステリBEST10へ     2021年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2021年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリ作品については、見所が多々あり、かつ良い作品が多かったと感じられた。しかも本格ミステリ系の作品も結構読むことができ、非常に充実した1年という感じであった。

 その本格ミステリ系の作品についてだが、かなり世代交代が進んだという気がする。新本格世代の作家も作品を出していないわけではないのだが、良作として目立ったものは、中堅、もしくは新進のミステリ作家の作品であったように思われる。新しい書き手が増えてきてくれたことに驚きつつ(それらを網羅しきれていない自分に年齢を感じつつ)も、新たな作家が1作2作で終わらないことを祈りたいものである。特に本格ミステリ系の書き手は少なくなっているので、希少種として末永く活躍してもらいたい。

 さまざまなミステリ・レーベルについては、それぞれがかろうじて生き残っているような感じ。それでも東京創元社のミステリ・フロンティアは良い作品を結構出してくれている。メフィスト賞からは今年1冊しか出なかったようであるが、近年ジャンルが中途半端になっているように思えるところは少し残念。また、「Kappa-Two」から2冊目の作品が登場したのはうれしいところ。こちらもなんとか、生きながらえているようである。毎年恒例の鮎川哲也賞に関しては、今年は残念ながら該当作なし。まぁ、微妙な作品が賞をとるよりはそれで良いのかもしれないが。あと、“ばらのまち福山ミステリー文学新人賞”から出た平野俊彦氏が今年早くも2冊目(しかも密室もの)の作品を出しており、今後さらなる活躍を期待したいところである。


 海外ミステリに関しては、やや不作気味であったような気がする。特に年の前半は良い作品がみつからず悶々としていた。ただ、それに関しては私自身が新しい作家の作品を開拓せずに、同じ作家の本や、シリーズものばかりを読んでいるというところが影響しているのかもしれない。年の瀬になって、ランキングなどを参考に本を選出して読んでみたら、結構面白い作品が今年も出ていたことに気づかされた。海外ミステリについては、当たり外れが大きいので、なかなか開拓しきれないが、もう少し色々な本に手を出してみた方が良かったのかもしれない。と言いつつも、自身で開拓した本はほぼ失敗に終わっており・・・・・・

 今年もなんだかんだいいつつ、結局はアンソニー・ホロヴィッツ一点であったのかなと思えるような年。各種ランキングを見ても、それは変わらないような状態なので、結局はそれを超えるような強烈な作品は出ていなかったということであろう。まぁ、それだけホロヴィッツの作品が良くできていたということでもあるのだろうが。

 それに続いたのがホリー・ジャクソンの「自由研究には向かない殺人」。これは、設定の妙と言えるであろう。ありそうで、意外となかった設定の作品であるかもしれない。この作品についてもそうなのだが、創元推理文庫から多々良作が出ているという印象。他の出版社と比べてひとつふたつ抜け出ていたように思える。そう考えると、新しい作品を開拓するには、とりあえず創元推理文庫から出た作品を一通り読んでおけばいいのでは? と思ってしまうほどである。

 他にはポール・アルテが2作品も訳されたのが大きな出来事か。しかも久々にツイスト博士ものがハヤカワミステリから出版されていた。これがなかなか面白い作品であったので、今後も続けてツイスト博士ものを訳し続けてもらいたいところである。

 他にはジェフリー・ディーヴァーとマイクル・コナリーはしっかりと毎年のように良作を出してくれてうれしいところ。ヘニング・マンケルの未訳作品も出ていたのだが、もうクルト・ヴァランダー・シリーズが読めないと思うと残念なところである。その他は、あまりシリーズといったものは読んでいないような気がするが、段々と私自身が新しいシリーズを追い切れていないだけという気がしなくもない。

 一番残念なのは、古典本格ミステリ系の作品のほうで目立った動きがない事か。論創社は毎月のように新しい作品を訳しているものの、どうも微妙な作品ばかり。他の会社も、さすがにもう出尽くしたという感じなのか、あまりこれといった作品がなかったように思える。ぼちぼちとではあるが、古典ミステリの復刊や新訳という形で出版されるものを期待するしか楽しみはなさそうである。





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