亜愛一郎の転倒


「藁の猫」
 デパートにて、画家・粥谷東巨の回顧展が行われていた。東巨は死後に有名になった作家で、回顧展は大盛況であった。そのデパートにアンモナイトの写真を撮りに来ていた亜愛一郎が東巨の作品の何点かにおかしな描写があると言いだす。それは“新色藤子像”が作られたのを境に東巨の心境が変わったと思われ、モデルの藤子は象の完成後に死に、東巨の死の少し前には妻が自殺していたという。亜愛一郎が東巨の死の謎を解く。

「砂蛾家の消失」
 土砂崩れにより列車が止まり、亜愛一郎を含めた三人は山道を歩いて行くことにした。一人がこの近辺に伝わる、消失した砂蛾家の伝説を童唄と共に語りだす。その後、道に迷った三人は、なんとか一軒家に辿り着くものの表札には“砂蛾”と・・・・・・。三人は家の住人に泊めてもらうことを許され、晩飯までごちそうになる。その家の窓から外に合掌造りの家をうかがうことができた。あくる朝、外には窓から見えたはずの家がなく、まるで消失していたかのように・・・・・・。愛一郎はただ一人、真相に気がつくのであったが!?

「珠洲子の装い」
 飛行機事故で亡くなった歌手、加茂珠洲子。生前は売れていなかったものの、死後に大ブレイクし、レコードは飛ぶように売れ、主演した映画が再演されれば連日映画館に多くの人が詰めかけた。そんなある日、映画会社の主催により、「珠洲子の絶唱」というタイトルの映画の珠洲子役をオーディションにより決めることとなった。珠洲子に似た、または似せた出場者が多い中、当日現場に居合わせた亜愛一郎は、とある珠洲子に似ているとはいえないものの雰囲気のあるコンテスト出場者を見て、あることに気づくのであったが・・・・・・

「意外な遺骨」
 馬本温泉郷付近を見回りしていた桜井は山で死体を見つける。死体の主は綿貫岩男といい、狩猟監視員であった。通称たぬきの岩さんは、最近3、4人の友人と海外旅行へ行って来たばかりであった。その死体であるが異様な状況となっており、散弾銃で殺害された後、念入りに焼かれていたのだ。その死に様は近隣に伝わる“あんたがたどこさ”の童唄のようであった。その童唄から真相を見抜いた愛一郎が語る犯人の正体とは!?

「ねじれた帽子」
 高級車に乗り込もうとした男の帽子が風で飛ばされた。亜愛一郎が追いかけて、なんとか帽子に追いつくことができたものの、当の男は帽子の行方など気にせず出発してしまっていた。愛一郎と一緒にいた大竹はおせっかいを焼き、帽子の主を探し出そうとする。帽子屋、デパート、病院と聞き込みを続け、当の相手に遭遇したとき、愛一郎の口から思いもよらない言葉が!!

「争う四巨頭」
 定年により引退した刑事・鈴木の下に亜愛一郎がやってきた。するとさらにそこへ、引退した県知事の孫である田中美智子が鈴木に相談があるとやってきた。彼女が言うには、祖父が同期生である銀行の元総裁、防衛庁の元管理局長、元大蔵省事務次官という4人で集まり、不穏なことをしていると。美智子は祖父がクーデターでも起こすのではと心配するなか、愛一郎は、彼らはサーカスでも行うのではないかと言うのであるが・・・・・・

「三郎町路上」
 朝日響子博士と亜愛一郎がタクシーに乗り、降りた時に、愛一郎はタクシーの中にいつものように傘を置き忘れる。その後、タクシーは別の人物を乗せ、行き先まで送り届ける。するとすぐに新たな客に呼び止められるのだが、その客が乗り込もうとすると、後部座席には死体が置かれていたのだった! しかもそれは先ほど降りたはずの客の死体であったのだ!! この奇妙な事件に対し、亜愛一郎はどのような真相に到達するのか?

「病人に刃物」
 入院中の編集者の磯明の下に亜愛一郎が見舞いにやってくる。屋上へと移動すると、同じく入院患者である堤を見かける。磯明に気づいた堤が彼の方へ近づこうとすると、別の患者と接触しそうになり、つまづいて倒れてしまう。慌てて磯明らが駆け寄ると、堤の体から血が流れていた。すぐに医者が手術を行うが、堤は死亡。彼の体にはどこから現れたのかナイフが刺さっていたという。その事故の前に堤は「私などは入院したお陰でお金持ちになりましてね」と語っていたのだが・・・・・・




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