“名探偵”・・・・
名探偵の条件というものについて、試行錯誤を繰り返してきているのだが、ここで強く感じることをひとつ。
「そもそも最近、探偵を職業とするキャラクタっているのだろうか?」
近年、本格ミステリは多様化してきている。新本格派の世代がある程度書き尽くしたかと思われた後、新しい世代によってミステリが引っ張られていくことになる。その際、
“本格ミステリ”というものから、多種多様な
“エンターテイメントミステリ”とでもいうべきものへと変わりつつある。
いうなれば、
ミステリの幅がひろがり今まで存在していた探偵小説というものの枠組みから抜け出したかのようなミステリが近年のミステリの形式ともいえよう。今まではミステリを書く際、どのようなトリックをもしくは犯人をどのようにという考え方から、
どのような設定においてミステリの世界を構築していくかということが主題になっているのではとも考えられる。実際、新本格派の流れを組むミステリと同様の形態においては、もういろいろなトリックがすでに書かれているために、それを超えた作品もしくはそれに並ぶ水準の作品を書くというのは並大抵なことではないはず。
というミステリ界における背景と、もしくは時代背景によるものもあるのかもしれないが今日においては、
探偵が少なすぎ!!
そう考えていただくと、
その1にて、昭和の2大探偵の名を挙げることしかできなかったことがわかってもらえると思う。ミステリが多種多様化したせいにより、
探偵という職業でなくても、
探偵という行為を行うミステリというものが増えてきている。
また、時代背景からすれば一般的に探偵という職業こそが不透明にも感じられる。これは昔からある考え方かもしれないが、実際の探偵という職業では主に調査という仕事が主になるのであろう。そういった現実的な考え方と、または現代的な情報の氾濫により探偵という職業ではなくても事件の推理をすることはできるという考え方などが浸透してきているのかもしれない。さらには、
日常の謎系のミステリが増えてきていることも一つの要因となっているのではないだろうか。21世紀、ミステリの中において、探偵という存在自体が消えつつあるのかもしれない。
そこで傾向を見てみるために、古今東西“探偵”という名のもとにて数々の事件を解決してきたものたちの職業をあげてみようと思う
探 偵 | 職 業 | 著 者 名 |
明智小五郎 |
探偵 |
江戸川乱歩 |
金田一耕介 |
探偵 |
横溝正史 |
神津恭介 |
助教授、教授(医学部) |
高木彬光 |
|
矢吹駆 |
学生 |
笠井潔 |
的場智久 |
学生、棋士 |
竹本健治 |
御手洗潔 |
探偵、学者 |
島田荘司 |
|
島田潔(鹿谷門実) |
作家 |
綾辻行人 |
速水三兄妹 |
刑事:喫茶店主:学生 |
我孫子武丸 |
鞠小路鞠夫 |
腹話術人形 |
我孫子武丸 |
火村英生 |
助教授:臨床犯罪学者 |
有栖川有栖 |
法月綸太郎 |
作家 |
法月綸太郎 |
信濃譲二 |
フリーター |
歌野晶午 |
|
森江春策 |
大学生、新聞記者、弁護士 |
芦辺拓 |
春桜亭円紫 |
落語家 |
北村薫 |
メルカトル鮎 |
探偵 |
麻耶雄嵩 |
二階堂蘭子 |
探偵 |
二階堂黎人 |
水乃サトル |
学生、サラリーマン |
二階堂黎人 |
キッド・ピストルズ |
パンク |
山口雅也 |
|
中禅寺秋彦(京極堂) |
古書店主、陰陽士 |
京極夏彦 |
榎木津礼二郎 |
探偵 |
京極夏彦 |
猫丸先輩 |
フリーター |
倉知淳 |
桜井京介 |
院生 |
篠田真由美 |
根津愛 |
女子高生 |
愛川晶 |
紅門福助 |
探偵 |
霞隆一 |
匠千暁 |
学生 |
西澤保彦 |
|
犀川創平 |
助教授 |
森博嗣 |
安藤直樹 |
学生 |
浦賀和宏 |
開かずの扉研究会 |
学生 |
霧舎巧 |
石動戯作 |
探偵 |
殊能将之 |
氷川透 |
作家 |
氷川透 |
石崎幸二 |
会社員 |
石崎幸二 |
昭和後半から平成にかけての探偵を中心に職業を挙げてみたのだが、やはり
“探偵”が少ない。ここではあまり紹介していないのだが、昭和に活躍した探偵達をもっと挙げてみると“探偵”を職業とする者が多くなるのではないかと思う。それが平成にいたっては上記に述べたような理由から探偵を職業とするものが減ってきているようだ。
なおかつ、近年において“探偵”を職業とする者たちに注目してみても素直にはうなずけない部分がある。例えば、
二階堂蘭子や
榎津礼二郎などは時代設定が昭和初期から中期となり、現代に登場しているわけではない。
また
メルカトル鮎や
石動戯作らは探偵と名乗ってはいるが、作品の中での取扱いが決してストレートな探偵であるとは感じられず、一種のパロディのようにもとらえられる。
結局、現代にて探偵というものを存在させようとすると例え本格であっても
紅門福助のようにハードボイルド色が強く感じられてしまう。
このようなさまざまな理由から、
探偵という職業の“探偵”というものが絶滅の危機に瀕しているといえよう。別に職業が探偵ではなくてもいいではないか、という意見もあるのかもしれない。だが、現在でも御手洗潔の新作が熱烈に期待されている状況や、昭和初期の名作が立て続けに復刊されている様相を見ると、やはり心のどこかではそういった探偵の存在を心待ちにしているという気持ちは誰しもあるのではないだろうか。
といったところで条件をもう一つ
一、名探偵は探偵を職業としていることが望ましい
やはり
名探偵を名乗るのであれば、職業は探偵であるべきではないだろうか。たとえ、それが現在絶滅の危機に瀕しているにしても、やはり私は探偵が職業のものの登場を待ち望みたいものである。
職業が探偵でないもの達は、えてして
受身の巻き込まれ型の者達が多い。巻き込まれながら、いやいや謎を解くというような探偵よりも積極的に飽くなき探究心を持って謎に立ち向かう探偵こそが望むべき
名探偵ではないだろうか。
といっても、でしゃばりすぎて嫌な探偵も実際存在するのではあるが・・・
ただし、ここで一つ妥協案。上記でも
“望ましい”と弱気で書いているのだが、やはり名探偵の職業が探偵だけとしてしまうのも少々悲しい気がするのでもう少し緩めたい。そこで、追加!
一、名探偵の職業は“作家”もしくは前途有望な“学生”であっても可
独りよがり度が強いのですが何でもかんでもというわけにはしたくないので、このあたりで
決定ということにしたい。何ゆえ作家と学生を付け加えたのかというと古今東西のミステリを見ていただければ登場頻度がなんとなく多いようなきがして独断で決定した。
作家は結局
“小説”というものからは決して切り離せない。それを考えると小説中において作家が探偵(もしくは助手という設定のほうが圧倒的に多いのだが)活動を行う設定というのも決して無理はないはずである。ここでは作家に対する飽くなき謎への探究心というものをかって、ここに挙げさせてもらうことにしたい。
学生はこれから先、“探偵”という職業につく可能性があるということを踏まえてあげさせてもらう。活躍している“名探偵”たちも、昔は必ず学生だったのだから。
というわけで、職業に関しては絞らせてもらった。そして
“名探偵”の条件として最後に重要なものを付け加えさせてもらいたい。それはずばり、
“性格”である。次は探偵たちの
“性格”にスポットを当ててみたいと思う。
続きは
その4で
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