2014年ベストミステリ




2014年国内ミステリBEST10へ     2014年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2014年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 昨年に引き続き、今年の国内ミステリも物足りなさを感じてしまった。何しろ健闘している作家として一番に挙げられるのが故人である連城三紀彦氏というのも何とも。今年の国内ミステリランキングで上位に取り上げられていた作品というと、米澤穂信氏の「満願」、麻耶雄嵩氏の「さよなら神様」、連城三紀彦氏の「小さな異邦人」の三作。どれも短編集。

 これらと比較すると、今年は強烈な印象を残す長編作品というものがなかったような。これ以外の作品は“団栗の背比べ”という具合で、ランキングの6位〜10位くらいのどの位置にきてもおかしくないものばかり。物足りないと言いつつも、佳作はそれなりにあり、10位くらいに入れたい作品はたくさんあって、自分のランキングでどれを残すかどうか、かなり迷ってしまった。

 このような状況の中で、今年2作も新作を出した麻耶氏の活躍はなかなかのもの。昨年もしっかりと新刊を出していて、寡作な麻耶氏にしてみれば、信じられないくらいの大活躍。他のベテラン作家もどんどんとこれに続いてもらいたい。他のベテラン作家もまぁまぁの出版点数はあるものの、期待にそうような作品は特になかったという薄い印象。

 中堅どころでは柄刀氏が久々に新刊を出してくれて、ホッとさせられた。また、三津田氏も2冊新刊を出してくれたので、これも一安心。あとは、乾くるみ氏や霞流一氏あたりが、活躍していたように思える。

 新進の作家としては、青崎有吾氏がシリーズ短編集を出し、長沢樹氏が多彩な作風を見せたりしてくれていた。あと、既にベテラン作家という雰囲気の深木章子氏もしっかりと良作を出してくれている。

 また、ことしはミステリ企画から出た作品がそれぞれしっかりと感触を残したように思えた。第6回ばらのまち福山ミステリー文学賞受賞作の「経眼窩式」、第50回メフィスト賞受賞作「○○○○○○○○殺人事件」、そしてミステリー・リーグから出た「フライプレイ 監棺館殺人事件」など。全体的に作品点数は多くなかったが、なかなかと粒ぞろいであったのではなかろうか。



 今年の海外ミステリはというと、特に誰がとか、どの出版社がということなく、それぞれがまんべんなく頑張ってるという印象。各出版社からそれぞれ良作が出ている。現在、シリーズものが攻勢を強める中、ミステリ界隈で強烈な印象をのこしたのは「その女アレックス」。なんと6つのランキングで1位をとったそうで、まさに一人勝ち。どうやらこの作品もシリーズもののようで、来年はこの著者のピエール・ルメートルの作品が何冊か訳されそう。

 近年の海外ミステリの印象では、文藝春秋と早川書房が、頑張っているなと感じていたのだが、今年は東京創元社や集英社、扶桑社あたりが負けず劣らず色々な本を出してきている。その他の出版社も、いろいろな作品を出版しており、段々と古典ミステリ路線から、近代欧米ミステリ路線へとシフトしてきたように感じられる。

 ミステリ企画としては、ヴィンテージミステリが2010年以来の新刊を出版し、しかも全部で三作品も刊行してきた。特にバークリーの「服用禁止」は良作で、まだまだ古典ミステリも掘りつくされていないのではと感じさせられた。そして気になるのは論創海外ミステリ。出版点数は、月に2冊ずつ出し、嫌というほどの出版ラッシュ。しかも月に3作品の新刊を刊行してきたときもあった。ただ、その割には話題になった作品がほとんどなかったのは悲しいところ。初期の粗製濫造状態に戻ってしまったかなと。月に1冊ずつくらいでよいので、もう少し良作に絞り込んでもらいたいところ。

 その他、ディーヴァーやコナリーなどは、レベルの高い作品を毎年のように読ませてくれている。今年は、ジャック・カーリィの新刊がなかったなぁ、とか、マイケル・スレイドってもう新刊を書いてないのかななどとも感じたが、その分新進の作家がたくさん出てきてくれている。

 古典ミステリについては、今年は紹介されなかったディヴァインが2015年には出版されるよう。また、クェンティンやマクロイの作品がここ数年しっかりと訳されているのはうれしいところ。そういえば、ポール・アルテって、どうなったっけ? とふと思い出したりして。





Mystery Note に戻る    Top に戻る