2022年ベストミステリ




2022年国内ミステリBEST10へ     2022年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2022年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリについては、それなりに賑わっていたのではないかと。個人的にも良いミステリ作品が多くあったと思えたし、世間的にも色々な作品が取り上げられている。ただ、自分が好みの作品と、世間的に好まれている作品と、だいぶ乖離しているなという印象。といっても、読まず嫌いで、各種ランキングで取り上げられていても読んでいない作品が多いのでなんとも言い難いところもある。流石に、なんでもかんでもと読める年でもなく、読書量もちょっとずつ減ってきているので、そこはもどかしいところ。それでも、有名作品は文庫でカバーしていきたい。

 今まで、ミステリ界は、ベテラン層とか、中堅、若手などと区別してきたものの、ここに来てだいぶ世代交代したという感じが見られている。ベテラン層は軒並み姿を消し(一部残っている人もいるが)、大方、中堅層や若手層で占められるようになってきたかなと。これに関しては、本格ミステリというジャンル自体が尻つぼみとなってきたことが原因かもしれない。しかし、ミステリ作品自体が減ってきているわけではないように思えるので、そろそろ“新本格ミステリ”などに代わる統一感のある言葉が出てくれば、ミステリ界もちょっとは盛り上がりを見せることになるのではと期待している。

 ミステリ作品が色々と出ている割には、新人賞やレーベル作品のほうは元気がないように思える。メフィスト賞も今年は出なかったし、その他新人賞もパッとしないような。それでも、メフィスト賞受賞者の夕木氏の「方舟」が今年ヒットしたのは大きな出来事。正直言って、メフィスト賞受賞作を読んだときは、そんなに大したことないと思っていたのだが、それは私の見る目がなかったということ。こういった活躍を考えると、新人賞等の試みも決して無駄ではないなと思われる。むしろ、デビュー作は大したことがなくても、その後にヒット作品を出す作家のほうが、期待できそうに思われる。あと、鮎川哲也賞受賞作が2年連続で該当者なしというのは寂しい限り。


 海外ミステリに関しては、これまた私自身が新しい作品を手に取ることが少なくなって、今まで読み続けているシリーズものばかりを追い続けていることにより、偏りが激しくなっている。色々と新しいシリーズが出ても、なかなか手を出す気になれないというのが現状。特にヨーロッパ圏の警察小説シリーズには、飽きがきてしまっていて、例え面白そうな作品であっても、手を出すのが億劫になってしまっている。

 今年になって、ジョセフ・ノックスの「スリープウォーカー」のシリーズを読んだりと、世間からはやや遅れているような。それでもなんとか、アンソニー・ホロヴィッツやホリー・ジャクソンの新刊は読み通している。今年の話題作であった「われら闇より天を見る」は、思わずスルーしてしまった。良さそうな作品だということはわかるのだけれども、なんとなくこれも読まず嫌いが出てしまった。

 それと一番、世間の評価と私自身の評価が乖離していると思われたのは、論創海外ミステリ作品について。今年は、結構よさそうな作品が出たと思えるのだが、世間ではほとんど話題になっていない。地味な作品が多いとはいえ、ヘンリー・ウェイドの「ヨーク公階段の謎」やジョン・ロードの「デイヴィッドスン事件」あたりはもうちょっと話題になってもよさそうなもの。論創海外ミステリを読み続けている身の上からすると、このレーベル、あまりにもつまらない作品を出し続けすぎなのではないかと。さらには、値段が高いのも一見さんお断りと告げているような気がする。それゆえに、たまに面白い作品があっても、見向きもされていないことになっているのではないかと心配になってくる。

 かつて原書房で出版された山口雅也氏監修の“奇想天外の本棚”が国書刊行会から出版されるようになったのは嬉しいことである。「Gストリング殺人事件」のように、気にはなっていたけれど読むことができなかった本を読むことができるようになったのは価値あることであろう。ただ、これまたマニアックなレーベルなため、一般受けはしなさそう。

 それと地道に、ハヤカワ文庫でエラリー・クイーン作品の復刊を新装版として行ってくれているのも助かっている。





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