2023年ベストミステリ




2023年国内ミステリBEST10へ     2023年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2023年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリ作品については、全体的に良い作品が多かったように思われる。ただし、全体的には良かったといいつつも、抜き出て良かったという作品はなかったような。それゆえか、ランキングについても、よく名前を聞く作家の作品が上位に上がっていたという感じであった。それゆえか、ランキングについては面白みがなかったかなと。また、個人的に近年あまりなかったことなのだが、ランキングに掲載されていた作品の多くを既読であったというのは珍しいことである。今年は意外な選出や際立った新進の作家の登場といったような出来事が少なかったということかもしれない。

 2023年は中堅作家というよりも、もはやベテランという域に達している京極氏や米澤氏、そして今年だけではなく、毎年のように作品を上げている東野氏あたりの作品が目立っていたように思われる。新進の作家としては、白井智之氏、井上真偽氏そして、ミステリ畑ではないであろうが小川哲氏の作品が目立っていたところか。特に白井氏の活躍はこのところ凄いと感じられる。今年出版された「エレファントヘッド」が、あのアクの強さにも関わらずランキングの上位に挙げられていたところは見事といえよう。

 それに対し、本格ミステリ系のベテラン作家の作品が少なくなっていっているのが寂しいところ。また、たまに出版されてもあまり話題とならないところがさらに寂しかったりする。なんとなく本格ミステリの衰退を感じつつあるところだが、それでも細々ながらも本格ミステリ系の作品を書く作家が新しく出てきたりはしているので、読み手側としては、まだまだ枯渇したというような気にはなっていないところである。なんとか、ミステリ・フロンティア、鮎川哲也賞、ばらのまち福山ミステリ文学新人賞、あたりから出てくる作家が本格ミステリの系譜を繋いでいっているという気がする。個人的には、メフィスト賞あたりにも頑張ってもらいたいところだが、こちらは本格ミステリ路線から外れつつあるような気がしてならない。


 海外ミステリに関しても、盛況といった状況だったのではなかろうか。今年はレベルの高い作品が多かったように思いつつ、その中から特に突出した作品はなかったように思え、ランキングでもばらけた感じになっていた。ホロヴィッツの作品が完全にトップという感じではなく、その他に三部作の最後をかざるホリー・ジャクソンの作品や、驚くことにまさかの選出となったロス・トーマスの作品などもランキングをにぎわせていた。

 その他、堕落刑事三部作で名をはせたジョセフ・ノックスの新作も話題となり、さらにはS・A・コスビー、マーティン・エドワーズ、ミシェル・ビュッシなどの名前もランキングで目にすることとなった。これら新しい作家・・・・・・と思いきや、ミシェル・ビュッシは過去のミステリランキングにも掲載されていて、そういえばこんな作家もいたなと思い起こすこととなった。

 今あげた、ミシェル・ビュッシの作品が本格ミステリ系の作品になっていて驚かされたのと、他にもトム・ミードという新進の作家が本格ミステリに挑戦していたりと、海外作品において、こういった本格ミステリ系の作品を読むことができたのはうれしいところ。さらには、ギジェルモ・マルティネスの作品が久々に邦訳されたり、ポール・アルテの作品が今年も紹介されたりと、話題作満載の年であった。

 古典海外ミステリを紹介するレーベルとしては、昨年に続いて国書刊行会からの<奇想天外の本棚>から作品が出続けてくれているのはうれしいところ。ただ、現在10冊目で止まっているのは気になるところだが、来年には残りの2冊と、第二弾という風に続いて行ってくれるのかな? まさか売れ行きが芳しくなくて・・・・・・などといったことがなければいいのだが。

 それと忘れてはならないのは論創海外ミステリについて。今年だけで17冊もの作品が刊行され、とうとう300冊に達したという論創海外ミステリ。しかし悲しいほどに話題作がない。これほど出しているにも関わらず、ランキングの片隅にも引っかからないというのはいかがなものか。例え話題にならなくても出版し続けるというスタンスは凄いと思えるのだが、もう少し面白い作品を読ませてもらいたいものである。





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