2024年ベストミステリ




2024年国内ミステリBEST10へ     2024年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2024年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年の国内ミステリ作品を見渡してみると、世代交代が着実に進んでいるということを感じられる。これまで新人作家だと思っていた人が、いつの間にか中堅作家となって、その後新しい作家も続々と登場している。また、ベテラン作家陣も決して消えたわけではなく、それなりに出し続けている人もいてくれるので、かつての本格ミステリ作家陣が絶滅したとまでは感じることはない。

 今年は、特にこれといった目立った作品がなかったような気がする。青崎有吾氏の「地雷グリコ」がランキングでは目立っていたが、個人的には2023年の作品という認識であるので、今年(2024年)の目玉という感じではなかった。隠し玉的な存在で言えば、永嶋恵美氏の「檜垣澤家の炎上」あたりか。これはランキング本がなければ完全にスルーしていた作品であったので、読むことができて良かったと思える作品。

 その他、近年活躍が目立つ、方丈貴恵氏、早坂吝氏、白井智之氏、市川憂人氏、今村昌弘氏らがしっかりと新刊を出してくれているのはうれしい限り。今後は、このあたりの作家が中心となってミステリ界が進んでいくことであろう。今のところ宝島社文庫のみからの出版にとどまっているが、鴨崎暖炉氏の動向にも注目したいところ。

 そして新人作家ではないのだが、ついに2冊目が刊行された古泉迦十氏あたりも注目すべきところであろう。決して出ることはないだろうと思っていた2作品目の「崑崙奴」が出たのだから、今年一番のサプライズと言ってよいのかもしれない。この古泉氏の作品もそうだが、昨年くらいから星界社FICTIONSからのミステリ作品が多く出版されている。これは完全に講談社ノベルスから星界社FICTIONSのほうへ移行していったということになるのだろう。個人的には、講談社ノベルスから新刊が出なくなってきたことは寂しい限りであるが、これもひとつの時代の流れと捉えるべきであろう。

 その他には、細々とではあるが“Kappa-TWO 登竜門”レーベルから新たな作家が出続けている。あと、今年ミステリ・フロンティアからの刊行された作品が少なかったのは残念なところ。そしてメフィスト賞については、ミステリ路線ではなくなりつつあるので寂しく感じてしまう。ただ、私があまり読んでいないだけで、近年のメフィスト賞受賞者のなかで頑張って、書き続けている作家が結構いるようである。


 今年の海外ミステリについてだが、とびぬけた作品がなかったという感想。その辺は、特に物凄くよかったと思えなかったホロビッツの作品がランキングの1位を占めていたことからもわかるような気がする。また、海外作品に関しては、いろいろなジャンルの作品が出ていて、ばらけてしまったゆえに、ひとつにまとまりきらなかったという感じもする。

 本格ミステリ風の作品では、「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」、「白薔薇殺人事件」、「ポケミス読者よ信ずるなかれ」、「モルグ館の客人」、「ミステリーしか読みません」などが出ていた。これはかなり盛況とも言えるのだが、当たり外れが激しかったのも大きな特徴。人によって、捉え方は異なると思われるので、ここに挙げたなかで未読の作品があったら是非とも試していただきたい。

 お馴染みの作家でいうと、マイクル・コナリー、ジェフリー・ディーヴァー、アンソニー・ホロヴィッツなどがきっちりと今年も作品を出している。スティーヴン・キングに至っては、文庫書下ろし作品なども刊行されており、相変わらずの盛況ぶり。ピエール・ルメートルがミステリとしては最後の作品となるものや、ローレンス・ブロックがマット・スカダー・シリーズの最後の作品をあげたりと、終焉を示すものが出ているのも気になるところ。そういえば、ドン・ウィンズロウも作家活動を終えることを宣言している。

 いつもながら話題に上がりそうで上がらない論創海外ミステリについてだが、自分のランキングで2冊入ったというところが、個人的には大きな話題。あまり期待していなかったのだが、思っていたよりも面白かったナイオ・マーシュの「楽員に弔花を」と、雰囲気からして面白そうなノーマン・ベロウの「幻想三重奏」が良かった。今後もこういったレベルの作品を出し続けてもらいたい。論創海外ミステリ全体で見てみると、あまり面白くない作品が多いということは事実なので。既に論創海外ミステリから遠ざかっている人も多いと思われるので、機会があれば、今あげた2冊くらいは読んでいただきたいところである。

 国書刊行会については、<奇想天外の本棚>が途中で止まってしまったまま。その代わりというわけではないのだが、ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ・コレクションの刊行が始まった。あとは、たまに良い古典ミステリ作品を掘り出してくれる扶桑社文庫が「ウナギの罠」という作品を発掘してくれたのはうれしいところである。





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