2025年ベストミステリ




2025年国内ミステリBEST10へ     2025年海外ミステリBEST10へ



このランキングは2025年1月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年、自分が作成した国内ミステリランキングを見渡すと、ほとんど本格ミステリ作品で埋め尽くされているじゃないかと、改めて驚かされてしまう。だんだんと、本格ミステリが読めなくなりつつある時代だと勝手に思い込んでいたのだが、決してそんなことはなく、しっかりと本格ミステリが生き続けていると感じられた。ベテラン作家から、中堅作家、新人作家と、幅広い作家によってミステリか書き続けられていると、改めて感じられた2025年末。

 今年の国内ミステリ界での大きな出来事はといえば、西澤保彦氏が亡くなってしまったこと。デビュー作品から読み続けていた作家のひとりであったため、大きなショックを受けた。近年、はやりつつある特殊設定ミステリの元祖ともいえる書き手であり、酩酊探偵・匠千暁シリーズなどが、もはや読めなくなってしまうと思うと、寂しくてならない。

 今年活躍した作家に関しては、特に誰というよりは、いろいろな世代の作家がまんべんなく活躍していたという風に感じられた。今や、ミステリの書き手も幅広くなりつつあるのかなと思ってしまう。ベテラン作家では、笠井潔氏が精力的に作品を書き、あまり話題にはならなかったが、島田荘司氏もしっかりと新刊を書き上げてくれている。久々の作品という印象は、霞流一氏が新たな作品を出したり、北山猛邦氏の作品は、本格ミステリの短編集としては、結構話題になったのではなかろうか。また、梓崎優氏のミステリ・フロンティアからの作品も久々という気がする。若竹七海氏の葉村晶シリーズも間隔をあけながらではあるが、まだまだシリーズが存続している。久々というか、カムバック賞とでも言いたくなるのは、飛鳥部勝則氏であろう。15年ぶりに部厚い新刊が本屋に並ぶこととなった。

 他に変わり種の作品を上げるとすれば、「我孫子武丸犯人当て全集」なんていうものが出ていたり、また、天童荒太氏が金田一耕助風のミステリ作品「昭和探偵物語」なんているものを出していたりする。

 新人作家でいえば、いまだに前作のほうが話題作となっている、鮎川哲也賞作家の山口未桜氏の2冊目が出たり、星界社FICTIONSからは今年も南海遊氏の作品が出版されていた。それと今年のミステリ界では、櫻田智也氏の作品がかなり話題になっていたという印象。

 こうして結構、いろいろな作家が活躍しているイメージはあるのだが、ミステリ・レーベルで考えると、作品自体があまり出ていなかったなと。先に上げた星界社FICTIONSからも、昨年までと比べると、やや元気がなかったような気がする。メフィスト賞からの作品は出ず、レーベルではないが、鮎川哲也賞は受賞作なし。細々とミステリ・フロンティアから作品が出続けているくらいという感じである。


 海外ミステリに関してだが、近年、停滞気味というか、良い作品が目白押しというような年が少ない気がする。というのも、近年の海外ミステリのランキングを見ると、同じ作家のシリーズものが多いという気がしてならない。ノン・シリーズものを書く作家も当然いるのだが、それでも同じ作家の名前を目にすることが多い。これは、私自身が同じ作家のシリーズ作品ばかり読んでいるということだけではないような気がする。業界全体で、そういった流れになっているような気がするのだが、どうであろうか。

 なんとなくではあるが、海外では映画なども、いったん売れると続編が出ることが多い。それもただ単に出るだけではなく、延々と続編が出続けたりする。元々海外のエンターテイメント業界がそのような流れで物を売ってきたということなのかもしれない。それがミステリ業界についても、同様のことが起きていて、ランキングを見ても、半分くらいはよく見る作家で埋められているなと感じてしまうのである。

 そういった流れのなかで少数ではあるが、毎年新たな期待の新進作家が紹介されたり、過去からの掘り出し物が見つかったりはしている。そういった掘り出し物を発掘してくれるのは、近年だと新潮文庫からの紹介が多いように思われる。こちらは、近代作家のみならず、昔のミステリからハードボイルドまで、幅広くいろいろな作品を紹介してくれている。今年は、「私立探偵マニー・ムーン」や「罪の水際」などが邦訳された。あと、昔から、扶桑社文庫も、物珍しい作家を発掘してくれているという印象。今年話題になったのは、フランシス・ビーディングという作家の「イーストレップス連続殺人」という古典作品が紹介されている。扶桑社あたりが新たな作家を発掘すると、その後、他の出版社がその話題になった作家の他の作品を出してゆくというような流れは、昔からのことである。

 古典ミステリの新たな発掘といえば、論創海外ミステリがあげられるところだが、今年はやや出版点数が少なかったような気がする。その中味についても、ネロ・ウルフ・シリーズ一点張りと感じてしまうような塩梅。

 あと、気になったことが一つ。早川書房のハヤカワ文庫の値段がやけに高くなったということ。文庫で二千円を超えるものが多々、出てきている。海外のSF作品の新装版を購入しようかなと思ったのだが、値段の高さを見て、やめてしまった。文庫本を購入して読むことなんて、気軽な道楽の一つと考えていたのだが、今や読書さえも人を選ぶようになってきたということなのかと、ふと考えてしまう。





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