順位 | タイトル | 著 者 | 出版社 |
1位 | 殺人症候群 | 貫井徳郎 | 双葉社 |
2位 | 世界は密室でできている | 舞城王太郎 | 講談社 |
3位 | 双月城の惨劇 | 加賀美雅之 | 光文社 |
4位 | 作者不詳 | 三津田信三 | 講談社 |
5位 | 法月綸太郎の功績 | 法月綸太郎 | 講談社 |
6位 | 人魚とミノタウロス | 氷川透 | 講談社 |
7位 | 猫丸先輩の推測 | 倉知淳 | 講談社 |
8位 | 密室に向かって撃て! | 東川篤哉 | 光文社 |
9位 | クビシメロマンチスト | 西尾維新 | 講談社 |
10位 | 水の時計 | 初野晴 | 角川書店 |
次点 「半落ち」横山秀夫 「青空の卵」坂木司 「見えない精霊」林泰広
第10位「水の時計」初野晴 (角川書店 単行本 横溝正史賞受賞作)
廃退なる都において絶望の少女と堕ちゆく少年が出遭ったとき、物語は紡がれ始め、水の時計が音をたてる。
現代版「幸福の王子」たる物語はどこへ到達しようというのか。静謐なる物語ここに登場。
第9位「クビシメロマンチスト」西尾維新(講談社 講談社ノベルス)
単なる青春ミステリなのか、ただの戯言なのか? あなどるなかれラストまで読んだとき、衝撃の展開が待ち受ける。狭義のミステリという殻にはもはや収まりきらない作品。
“青春エンタ”というべき個人ジャンルを築いてしまったこの一冊。
第8位「密室に向かって撃て!」東川篤哉(光文社 カッパ・ノベルス)
今年『KAPPA-ONE 登竜門』にてデビューした著者の二作目。デビュー作よりもこちらのほうが私好みだった。焦点となるのは、
犯罪は如何にして行われたのか? こんなハウダニットの小説もあったのか! ミステリのネタは決して尽きることはない。
第7位「猫丸先輩の推測」倉知淳(講談社 講談社ノベルス)
見事なまでの現代風奇人・猫丸先輩が今日も神出鬼没に巷に現れ、奇妙な事件に横槍をいれにやってくる。数々の奇妙な事件に対して、猫丸先輩はさらなる
奇妙な事件の見方を提唱する。猫丸先輩は何を見るのか?
第6位「人魚とミノタウロス」氷川透(講談社 講談社ノベルス)
新たなる悩める作家が真っ向から挑む本格ミステリ。ゲーデル問題、パラドックスもなんのその。細かいことに気にしながらも
本格論理的推理をここでも展開! アルコールの容器から語られる真実とは如何に!?
第5位「法月綸太郎の功績」法月綸太郎(講談社 講談社ノベルス)
たとえ長編は出なくても!! 法月綸太郎が送る秀逸なる短編集。三作目にしてそのレベルは決して落ちることはない。
本格ミステリファン必読、いや当然の一冊。これを読まなければ・・・・・・いつまた読めるかわからない。
第4位「作者不詳」三津田信三(講談社 講談社ノベルス)
2002年最も
怪しい作品といえばこれ。内容だけではなく、カバーやら概観までもが怪しい。全編通していえば、ホラーという分類になるのだろうが、その中に挿入された7つの短編の謎。これらには本格推理スピリットの意気がぷんぷん匂ってくる。これは2002年の野心作ともいえよう。
第3位「双月城の惨劇」加賀美雅之(光文社 カッパ・ノベルスKAPPA-ONE 登竜門)
外国の古城、連続殺人、切断された死体、密室殺人。これぞまさしく本格コード。こんな推理小説を待っていた!! 今年の本格ミステリは『KAPPA-ONE 登竜門』を語らずにはいられない。それら四作品のなかから本書を選択。やはりミステリは
“古城”である。
第2位「世界は密室でできている」舞城王太郎(講談社 講談社ノベルス密室本)
圧倒的なる“バカミス”ネタでありながらも本書であるからこそ許せるトリック。まさにこの事件は本書にこそふさわしい。
痛快青春ミステリーここに極まれり。
第1位「殺人症候群」貫井徳郎(双葉社 単行本)
本書を読了したときに自分のなかで、まずこの本を1位においてそれを超える本がでるかどうか、という判断基準で本を読んでいった。しかしながら結局、この本を超えるものはなかった。
大きなテーマを真っ向から捉えて書ききった一冊。その圧倒さこそが1位の理由。
冒頭でも記述したのだが、2002年は
“本格ミステリ作家復活の年”であった。しかしながら、その出版されたもののほとんどが私にとっては期待通りのものではなかった。今年の傾向としては秀作、佳作という範疇のものは多かったと思うのだが、
強烈な一撃というものを感じとることのできる作品は見受けられなかった。自分のなかではかなり票が割れ、10位以内であればどれがどの順位でもさほどおかしくはない。
とはいうものの、これらのなかの作品で見ると“本格ミステリ”の異なる形やオーソドックスなる形等々、さまざまな作品を楽しませてもらうことができたのも確か。少なくともこれからの“本格ミステリ”可能性というものはまだまだ秘めているのではないかと存分に感じられたのは間違いない。2003年こそは本格ミステリにおける強烈な一撃というものを期待したいものだ。